これまでの合同研究会とこれからについて


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2015年度より、核融合研の共同研究研究会と、特定非営利活動法人(NPO)「原子分子データ応用フォーラム」の合同で「素過程研究会」を行ってきましたが、昨年度(2018年度)研究会での参加者から指摘されたことをもとに、どのようにしたら研究会の運営をより良いものにできるか検討することになりました。

2019年6月21日に行った、フォーラムの定期総会で議論を行い、その内容に沿って「素過程研究会」に毎年来てくださっている研究者の方とメールのやり取りと電話でのお話をしました。それをもとに、8月25日に研究会のTechnical Working Group(TWG)ミーティングで、2019年度の「素過程研究会」の方針を決め、開催の準備をすることにしました。


合同研究会の運営の経緯について

2016-2018年度の合同研究会では、核融合研の共同研究研究会の代表者、所内世話人と、「原子分子データ応用フォーラム」の役員によるTWGによる運営が行われてきました。公募による一般講演と、年ごとに選んだテーマについての招待講演とを組み合わせてプログラムを作成しました。これと、その年に退職される先生による特別講演、懇親会、研究会の運営の方法について議論するランチョンミーティングなどを組み合わせてプログラムを作りました。

プラズマ科学研究の分野で、分光、原子過程に関する研究をされている方を対象として、一般公演を募集しました。そして毎年、新しく、興味のある研究を行っている研究者を選び、招待講演をお願いしました。


合同研究会のフィロソフィーについて

「素過程研究会」は、50年以上の歴史があり、分光、原子過程について、詳しくかつ率直な議論ができる場所が、長い時間をかけて作られてきたことは大切であり、今後も続けていくことの大切さについてはコンセンサスがあると思います。

「原子分子データ応用フォーラム」は、2010年に設立され、歴史は短いですが、フォーラムのメンバーからは、関連がある研究者が一堂に集まる機会であり、原子分子データを活用した研究開発を広める機会としての期待も示されています。

「素過程研究会」は、名古屋大学プラズマ研究所で核融合研究が始まり、その中で分光、原子過程の研究が重要なものとして取り上げられるようになって開かれるようになり、各大学に核融合実験装置が作られて、全国に広がった研究者が集まる機会になったと考えられます。磁場閉じ込めプラズマと慣性閉じ込めプラズマ、コアプラズマと周辺プラズマからなる核融合研究に加え、プラズマの産業応用や宇宙、天体プラズマの研究者も参加しています。50年以上の歴史の中では、最先端の分光計測技術が議論され、多様な物理のテーマ、電離・再結合プラズマモデル、二電子性再結合過程、分子活性化再結合過程、UTA(Unresolved Transition Array)などが関心を集めてきました。

このように、「素過程研究会」の活動は核融合プラズマの分光、原子過程の研究者が中心になって行われてきましたが、核融合研究の重みが、ITER、JT-60SAの研究開発が進むにつれて、次第に炉工学、材料などにシフトしているので、「素過程研究会」も炉工学、材料に関わる分光、原子過程の研究へとシフトするか、あるいは、プラズマ応用技術などの新しいテーマにシフトするかなどについて、いずれ判断が必要になるのではないかと考えられます。

研究・教育の環境の変化への対応も必要になるのではないかと考えられます。プロジェクトを企画し、予算を獲得することは、それまでの研究を続けていくために必要なだけでなく、若手研究者が適切な研究テーマ、マネージメントの機会を得て、キャリアを形成するのためにも重要になっています。

プロジェクトを企画するためには、現在の、分光、原子過程の研究課題をもとに、新しい物理の研究課題を探索する必要があります。そして、実験と理論、シミュレーションの研究者が互いに有機的に協力できるように、またシニアなメンバーと若手のメンバーがそれぞれふさわしい役割を果たせるようになど、マネージメントの能力を高めることも必要になります。

このようなプロジェクトを企画し、実施するためにも研究会は必要ですが、「素過程研究会」とはかなり性格が違い、また、申請書の作成や成果発表等のスケジュールが決められています。したがって、「素過程研究会」と「フォーラムセミナー」とをそれぞれの目的のために別に活用する方が良いとも考えられます。

研究会には教育の機会としての役割もあります。現在、国際会議は、完成した研究の内容を発表する場に、プラズマ・核融合学会などの国内学会は、学生の皆さんが発表の機会を積む場所になっているように思われます。それに対して「素過程研究会」は、まだ未完成の研究の進捗状況も含め、高度な研究の内容について詳しく議論するため、口頭発表を中心に、休憩時間、懇親会を通じて十分な討論時間を持てるようにしています。これは他にない機会であり、このような研究会をこれからも続けていくことには意義があると考えられます。

最後に、研究会は、核融合科学研究所の共同研究、つまり核融合研究の一環として、会場や参加者の旅費のサポートを受けています。したがって、核融合研究の動向を知り、核融合研の考えに沿った活動を行う必要があります。核融合研の所定の書類や発表会で活動について報告することに加え、核融合研の研究者でふさわしい方を研究会に招待講演者としてお呼びし、研究内容を話してもらう一方、研究会の活動についても知ってもらうように努めています。


合同研究会のマネジメントについて

開催日、会期について

研究会に多くの方が参加することは、活発な議論を行い、分野を活性化させるために重要ですが、会期が限られているので、十分な講演時間、討論時間をとるためには、プログラムなどを工夫する必要があります。

開催日は、多くの方の参加しやすさを考えて年末に設定していますが、現在の忙しい大学の事情を考えると調整には限界があり、ここ数年の3日間の会期は長すぎると感じられるようになっているようです。性格の異なる「素過程研究会」と「フォーラムセミナー」を日程の前半と後半に分けるなど、参加者が目的別に出席しやすくする方が良さそうに思われます。

ここ数年、核融合研の会議室を確保するために、年度の初めに決定しています。他方、日程2ヶ月前くらいまでに大まかなプログラムが決まっていると、遠方からの参加者が参加しやすくなるという指摘がありますが、実際には要望に十分に応えられずにいます。


発表の形態やプログラムについて

分光、原子過程の研究は、広い分野で行われていることや、高度な技術が使われていることから、初めて参加する人や学生の皆さんのためにチュートリアルが必要という意見は、例年アンケートの回答にもあります。限られた時間の中にチュートリアルを入れるためにはプログラムの工夫が必要です。

口頭発表を中心にしたプログラムで、高度な研究内容について十分な議論をすることを目指している、現在の方針を続けていくことは望ましいと思われます。時間を有効に使うためには、口頭発表を精選されたものにすること、学生の皆さんには十分準備をして良い発表をしてもらうこと、それに対してシニアな研究者が適切にコメントしフォローすることが重要です。

若手の研究者の発表は、たとえそれが以前から続けられているようなテーマであっても、新しい視点から見ることによって新しい研究が作られることが期待されるという点で、重要と考えられます。

ポスター発表を取り入れるのが良いという意見も例年アンケートの回答にありますが、シングルセッションである必ずき聞くことになる口頭発表と違い、自分から見にいかなかないといけないポスター発表は結果的に聞き逃してしまうなどの短所も考えられます。ポスター発表を活用するためには、いろいろな工夫が必要なようです。例えば、若手研究者が優先的に口頭発表する代わりに、シニアな研究者がポスター発表したり、ポスター発表と懇親会を組み合わせたポスターレセプションすることで、議論が活発になることを期待するなどが考えられます。


新技術の採用について

2016年度以降、発表者の方には、事前にアブストラクトの提出をお願いし、それをwebに掲載し、参加者が発表内容を事前に知ることで議論がより活発にできるようにしました。

メールに替えて、メッセンジャーやSNSを活用することは、コミュニケーションをより効率的にするために必要と思われます。テレビ会議のシステムも、SkypeからZoomに変わって品質が良くなり、例えば外国にいる研究者に講演を依頼することもできそうになってきました。YouTubeなどの画像配信ソフトウエアは、例えばチュートリアルを学生の皆さんにの研究会の前に配信して予習してもらったり、毎年のチュートリアルの内容を蓄積して体系的な教科書を作ることもできるようになると考えられます。貴重な研究会の時間を活用するために役立つと考えられます。しかし、それを実施するためは、技術的に解決しなければならない課題が多いとも考えられます。


2019年度研究会の開催について

以上の検討を踏まえ、2019年度の合同研究会は、12月24-26日の会期のうち、24,25日を主に「素過程研究会」、26日を「フォーラムセミナー」にあてることとした。そして、研究会のマネジメントの項にでも述べた、学生の皆さんが分光、原子過程研究の基礎知識を学ぶためのチュートリアル2件を、今回初めての試みとして24日の午前中に行い、ネットワーキングを深めるための懇親会を24日に行い、インフォーマルな飲み会を25日に行うこととしました。

「フォーラムセミナー」に相当する部分では、データサイエンス、インフォマティクスを活用した分光、原子過程研究というコンセプトに基づきプロジェクトの申請の準備のための特別セッションを行うことにしました。